制作ウラ話

2010年3月22日 (月)

”何か”が見える!?

前回の記事でちらっとご紹介した、付きもの一式(本表紙、表紙カバー、帯コピーなど)。
本書『chapter TWO』がお手元にある方は、表紙カバーの裏側と本表紙をチェックしてみてください。

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パッとご覧になってわかるとおり、リンク表面の写真を使用しています。
お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、こちらは
この「メイキング・ダイアリー」のタイトル周りでもチラリと使用している写真です。

厚みのあるハードカバーの本なので、「型崩れするからがばっと開くのはイヤ…」という方もいらっしゃるかもしれませんが
表紙を平面にしてみると、ダイアリーでは見ることのできないあるものをご覧いただけるかと思います。

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▲ヒントはこのジェフのエッジさばき。懐かしのコンパルソリーを見ているような気持ちになりますね

かつて、コンパルソリーでは、スケート靴のエッジで絵柄などを描き、出来栄えを競ったといいます。
この『chapter TWO』の本表紙を広げてみると、ジェフ作の何かが見えるかもしれません。

ちなみにこれらは撮影の合間に遊びで行っていたものなので、
“何か”の出来栄え=ジェフのコンパルソリーの腕前とはなりませんのであしからず!

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2010年3月20日 (土)

「もしも」目線でシミュレーション

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▲どの表紙がよかったですか?

7月にジェフ立会いのもと写真チェックを行ったときから、表紙に使用する写真は2パターンに絞り込まれていました。
目線ありと目線なし。どちらを採用するかで、作品のイメージはまったく異なります。

表紙は作品の顔。商品の顔。
全国の書店やオンライン書店の商品紹介でとりあげていただくにあたって
書店さんや消費者の方に印象づけるものにしたいところです。
長年のジェフファンのみなさんにドキドキしてもらえる表紙。
通りすがりのお客さんに「彼は誰?」と思ってもらえるようなアピールのある表紙はどれだろう?
そこで、ちょっとシミュレーションをしてみました。

【もしもジェフの本が写真集コーナーに陳列されたら】

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スタッフの個人的な好みでは、目線なしの横顔バージョン。
デザイナーさんご夫婦は、旦那さんが目線あり。奥さんが目線なし。
そのほかのスタッフからも「コアなファンの方は目線ありのアイドルっぽい写真は嫌うかもしれない」
「商品の顔になるんだから、アイコンタクトは絶対必要!」という意見や、
普段フィギュアスケートをまったく見ない、予備知識のない女性スタッフからは
「こんなにカッコイイんだから、目をそらしちゃもったいない!」などの意見をもらい、
社内的な総意としては、目線ありが優勢となってきました。

ジェフサイドには、PDFの状態でチェックを依頼。
目線あり/なしの写真の違いほか、使用する色やロゴなど、デザイン別にチェックしてもらった上で
最終的に「目線ありバージョン、背の色はブルーで」との返答をいただきました。

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▲先方に提出したデータ一式(1パターン分)左から扉ページ、本表紙、表紙カバー、帯コピー

校正作業はまだまだ続きますが、作品の完成形がなんとなく見えてきました。

↓メイキングDVDの盤面デザインも上がってきました。
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▲学研ボムの付録(グラビアアイドルのみなさん大集合!)を拝借して
DVDの貼り付け位置を指示したら、この日の作業は完了です

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2010年3月18日 (木)

刷り出しがやってきた!

印刷所への入稿から4日がたち、「初校」の作業がスタート。
今回ご紹介するのは、表紙や表紙カバー、帯コピーなど、本紙以外の「付き物」と呼ばれる部分の校正作業です。

表紙カバーにはPP加工(PP=印刷された紙に接着剤を塗布してフィルム/ポリプロフィレンフィルム を圧着させたもの。
フィルムを貼ることで書籍表面の劣化を防ぐことができ、光沢感がやマット感が出るため見栄えもアップします)を施しました。
使用する用紙や加工の程度別に、4パターン×2バージョン(目線あり/目線なし)計8パターンの刷り出しをお願いしました。

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▲刷り出しの一部。写真の絵柄は2パターンですが、背や文字の色、光沢感、マット感などが少しずつ異なります

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▲帯コピーのカット中。どんどん本らしくなってきました

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▲表紙候補8バージョン勢ぞろいの様子。平面でイメージしていたものとはまた違った存在感があり、
「どれも捨てがたい!」というのが正直なところ

カットした刷り出しを、本番さながらに
束見本(つかみほん…実際の仕上がりと同じ材料・ページ数で製本した白紙の見本)に纏わせてみました。

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▲表紙カバーが「マット」のもの。
最終的にこちらのパターンが採用となり、帯コピーの文句や書体などの手直しを加えました

構想段階では、もうひとまわり大きなサイズでの制作を考えていましたが、紙の値段の高騰で断念。
また、仕様をソフトカバーからハードカバーに変更したほか、
いくつかのマイナーチェンジをしたことで、第1弾でご案内した予価よりも価格が上がってしまいました。
「気軽に買える値段じゃないから、購入するのを躊躇する人もいるのではないか」と、
心苦しく感じることもありましたが、ハードカバーのずしりとした重みは格別なものがあります。

以上、作り手の自己満足満載のレポート、失礼いたしました。

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感心、のち爆笑の入稿

8月中旬、第一弾の入稿がスタート。編集スタッフ、デザイナー、
印刷所の製版技術者=プリンティング・ディレクターと、営業担当者立会いのもと行われました。
写真原稿ひとつひとつの質感やトーンなどの注意事項を照らし合わせながら作業を進めます。

とくにフィギュアスケートの競技写真は、スタッフもはじめて取り扱う素材。
ジェフの衣装の素材感やリンクの質感がつぶれてしまうことは避けたいけれど、
手を加えすぎると競技会の会場をとりまく独特の空気感が薄れてしまうので要注意…など、確認していきます。
リンクの質感は、場所によってキラキラ、ツルツルしているところ、ざくざくしているところ
エッジの跡などなど、さまざまな表情があり、これにはプリンティング・ディレクターさんも感心。
細かく注意ポイントを受け入れてくれました。


ここで印刷所の営業さんがひと言。
「制作の依頼をいただいてから、フィギュアスケートの映画に主演している俳優さんの写真集だとか、
映画のメイキング本だとか、情報が錯綜していたんですよ。それで調べてみたんですけど、彼は本物のスケーターなんですね」

これには一同大爆笑。

スタッフも印刷所の職人さんも、日ごろはエンタメ系のアイテムを取り扱うことが多く、
フィギュアスケーターの写真集を手がけるのは初めて。
慣れ親しんだ仕事の中に「初」の試みがあるのというのはめったにないことで
初心に立ち返るようなフレッシュな気持ちになれたこともまた、今作の収穫だったのかもしれません。

「仕上がりを楽しみにしていてください!」
製版担当の職人さんの言葉がとても頼もしく、うれしく響いたのは言うまでもありません。

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制作プロセス覚え書き

タイトル決定から入稿までの日々は、正直まともな記憶が残っていないくらい怒涛の作業の連続で
今となってはどのような手順で作業を進めていったのかはっきりと思い出せません。
各プロセスには、以下のようなエピソードがあったと記憶しています。

・メイキングDVD…編集作業が完了し、ラフ映像をジェフ側に提出→NG場面を指摘・削除のお願い
→削除シーンが少なかったため、当初は15分程度で見積もっていた収録時間が約25分にボリュームアップ。

・プライベート写真…ジェフからタイトル案が届いたのち、ジェフ側からプライベート写真が到着。
幼少期の写真は、デジカメ普及前ということでスキャンしてデータ化したものを送ってもらわねばならず、
先方にもお手間をかけることになってしまいました。
が、「もうちょっと頑張って集めてみるよ。作業が順調にはかどるといいね!」とのメッセージがあったため、
さらに追加で写真をもらえるのならばぎりぎりまで待って反映したい。でも、いつ届く? あとどれくらい待てる?
第二弾が間に合わない場合を想定して今ある写真を有効利用しようetc…。時間との戦いは続きます。

・オンライン書店へのプロモーション…8月に入り全国の書店にはジェフ本の発売が告知され、
オンライン書店などでは商品コードや発売日、予価等の情報がオープンになりました。
そして8月中旬からは予約受け付けがスタート。
このオンラインでの予約は、本の印刷部数を最終決定するにあたり目安にもなるもので、
出版社としても積極的にプロモーションを行う必要があります。
そこで、書店ごとに先行予約特典として限定で生写真をつけていただくことになりました。
ジェフ側にも予約してくれた人へのフリーギフトとの説明をして、どの写真を特典に使用するのかをチョイス。
また、WEBや雑誌などで写真集の発売を告知する際に使用する写真の絞込み→選定作業も同時進行しました。

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▲オンライン書店用の予約特典とプロモーションに使用する写真リストの一部

いつどのタイミングで先行予約の受付・予約特典の有無を発表するか、特典の写真の絵柄はどのようなものなのか。
告知タイミングと方法は各書店に一任したため、お店ごとにかなりのタイムラグがありました。
混乱された方もいらっしゃったかと思います。あらためてお詫び申し上げます。

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2010年3月17日 (水)

タイトル決定まで

写真の絞込みを経て全体の構成がまとまってきました。ここからはジェフサイドとも連携。
今回は一連のやりとりの中から、本書タイトル『chapter TWO』決定までのいきさつをご紹介します。

7月の撮影で、ジェフに「お互いにタイトル案を出し合いましょう」と告げた際、
「僕のお気に入りの言葉があって、それを引用するのもいいと思うんだよね」と言っていたジェフ。
そこで、写真集全体の流れを見てもらった上で、あらためてジェフからタイトル案をいただきました。
こちらから提出した案についても検討してもらいます。

ジェフからは、以下のような返答をいただきました。


Hey!

I found one of my favorite quotes from Glenn Gould and it foes like this:
“The purpose of art is not the release of a momentary ejection of adrenaline but rather the gradual,
lifelong construction of a state of wonder and serenity.”

– Glenn Gould


グレン・グールドの名言の中からお気に入りのを見つけてみたよ。こんな感じ。
「芸術の目的は、アドレナリンの瞬間的な放出ではなく驚きと平穏な心の状態を生涯かけて築いてゆくことにある」

                                                                                                                  
(グレン・グールド)


So as another option for the book title, I was thinking maybe “State of wonder and Serenity”.
This refers to my move from competition as more of a movement towards a new chapter rather than saying goodbye.
To wonder and pursue the future, and be at peace with this movement (which I believe to be).
Just a suggestion.  What do you think? But I also like Arigato as well.
If we choose Arigato I can mention the quote in the foreword perhaps…


本のタイトルとして、その他の候補として考えていたのは、「State of wonder and Serenity」。
この言葉は、競技から引退して人生の新章へと向かう僕を表していると思う。サヨナラって告げるよりも雄弁にね。
未来を(夢見て信じ)追い求め、これらをもってして心穏やかに(そうなると僕は信じているんだけどね)。
…って、これはひとつの提案にすぎないんだけれど、どう思う? 
もちろん、「アリガトウ」(←スタッフからの提案のひとつ)も気に入っているよ。
もし「アリガトウ」にするとしたら、こんな前書きを添えるのはどうだろう?

        (以下「アリガトウ」の寄稿 ※本書『chapter TWO』に原文ママで掲載しておりますのでぜひご覧ください)


上記のジェフからのメールを見た瞬間、「ファンのみなさんは喜ぶだろうなぁ」と感激したと同時に、
悩ましい思いにかられました。ジェフが敬愛してやまないピアニスト、グレン・グールドは、
カナダはトロントに生まれ育ち、独自の感性をもって唯一無二のスタイルを確立したアーティスト。
ジェフが生まれた1982年の秋に50年の生涯に幕を閉じた伝説の人物です。
グールドを敬愛してやまないジェフは、2005-2006シーズンのフリープログラムで
「トリビュート・トゥ・グレン・グールド」を発表するなど、ファンのみなさんもその縁をご存知かと思います。

グレン・グールドの言葉の引用という発想は多いにアリ。しかし、タイトルとしては長すぎてしまう。
では、「State of wonder and Serenity」だったら? 
これも和書のタイトルとしてはやや長く、日本人への耳なじみという点でもハードルが高いように感じました。
「思い切って和訳バージョンだったらどう響く?」と視点を変えてみるも、
含蓄あふれる「wonder」と「serenity」を辞書どおりに訳すのでは、その世界を伝え切ることはできないように思いました。

あれこれと頭を悩ませ、スタッフ間で検討を重ねた上で出した結論は、「もっとキャッチーに」。
ジェフの思いを尊重し、この本のあり方などすべてを踏まえた上で、『chapter TWO』の案が浮かびました。

大好きなスケートにすべてをささげ、完全燃焼したアマチュア時代を経て新しい人生をスタートさせた彼を表す言葉。
プロスケーターとしてのキャリアはもちろん、ひとりの男性として、社会人として、
これからどのようなことにもチャレンジできる/いくつものチャプターを重ねていくことが可能な
今の状態を表現した言葉=chapter TWO.
スタッフ側の意図を説明し、ジェフ側からも最終的なOKをいただきました。

以上がタイトル決定までのいきさつとなります。
本書の発売にあたり、ジェフが思っていたこととして、心の片隅にとどめていただければ幸いです。

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写真セレクト作業●その2

今作のハイライトのひとつに、「アマチュア時代の競技写真のアーカイヴ」があります。
2001
年のグランプリシリーズNHK(熊本)から
2008
年3月の世界選手権(スウェーデン・イェーテボリ)まで
約7年間のジェフのシニアスケーターとしての変遷を一気見できるよう、時系列でまとめています。
ファンの皆さんが実際に観戦したであろう日本開催の試合や、
ジェフのキャリアのハイライトとなった試合、エキシビションでのパフォーマンス。
アマチュア時代のマスターピースともいえる名プログラムや衣装をフォローしています。

本書を手に取った方それぞれの思いや記憶、愛着をもって楽しんでいただければ幸いです。


競技写真は、国内外の競技会の撮影を数多く手がけるJapan Sportsさんに提供いただきました。

ジェフの魅力であるMIFMoves in the Field)をとらえた心地よい写真はもちろん、
体全体で曲想を表現していることがうかがえるひとコマ、緊張の表情、そして、勝利の瞬間。
スポーツ写真でしか表現できないパワーや美しさを前に、感動の連続!
ここでも「あと○ページ削らないと入らない!」と、台所事情とのせめぎ合いがあり
スタッフ一同頭を悩ませることとなりましたが、ハードな中にも楽しさいっぱいの作業となりました。


Competition

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2010年3月16日 (火)

写真セレクト作業●その1

殺人的スケジュールの撮影=完了。ジェフの写真チェック=完了。
ここからは、掲載写真の絞り込みや本紙の構成、デザインなど、水面下での作業が始まります。

発売日まで2か月弱というタイミングながら、9月に大型連休を挟んでいる関係で、連休前までに製本を終えねばなりません。

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▲PCの作業画面(クリックで画像がやや拡大します)…ページに限りがあるのがつらく感じます

ジェフ側からOKをもらった写真は約360点。
その中から掲載写真をピックアップするものの、捨てがたいカットばかり。


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▲表紙のデザインを作業中の様子

「うっすらと写真にグリーンをかぶせてみたら、氷に溶け込む感じがステキだった!」(デ)
デザイナーさんの提案を受け、チェックしてみると、これがとってもステキ。


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▲写真にうっすらとグリーンをかぶせてみたところ(
日焼け肌になってしまっていますが)

「写真のテイストとしてはアリ。カッコイイけど、氷の質感は死んじゃうよね」
「本人がリンクに横たわった意味がなくなってしまうかな?」
深夜のリンクで冷たい思いをした苦労や、写真集を手に取って見てくださる方との距離感を考えると、
写真に大幅な加工を施してトーンチェンジをはかるのは、得策とはいえないかもしれません。
アートとしての見栄えを優先するか、写真そのものの本質を追求するか。悩むところです。

デザインは、ときとして終わりのない作業になります。
締め切りまで猶予がない中、大いに悩んで作り上げるのみ! スタッフの寝ずの作業は続きます。

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